ドバイ不動産 売買契約書(SPA)の注意点
ドバイのオフプラン購入では、売買契約書(SPA/Sale and Purchase Agreement)に署名する前に確認すべき点がいくつもあります。本記事は、実際の契約に共通して見られる条項の『型』を、個人情報・取引情報を含まない形で一般化し、国際弁護士・税理士監修で整理したものです。なお、解約や既払い金の扱いには契約より優先する法律上のルール(ドバイ=Law No.19 of 2017)もあるため、その要点も併せて解説します(一般的な情報提供であり、個別の法律助言ではありません)。
まず確認すべき2点(最重要)
オフプランの売買契約書では、数ある条項のなかでも特に次の2点を、署名前に必ず確認することをおすすめします。
① 転売(アサインメント)の条件とNOC発行要件
支払い済みの割合だけでは転売できない場合があります。たとえば「累計50%以上を支払い、かつ直近の分割金の支払いが完了していること」が条件の場合、累計70%を支払っていても、次の分割金(例:10%)を支払うまでNOC(譲渡承諾書)が発行されず、転売できないことがあります。契約前に「転売に必要な累計支払割合」と「NOC発行の前提条件」をご確認ください。
② 支払いが続けられなくなった場合の既払い金
購入後に分割金を支払えなくなった場合、すでに支払った金額がどこまで戻るかは、契約書だけでなく法律で上限が定められています(ドバイ=Law No.19 of 2017。工事の完成度に応じて留保上限が変わる/次章で詳述)。契約にこれより不利な条項がないかを、署名前にご確認ください。
【重要】解約・既払い金は『法律』で上限が決まる(契約より優先)
オフプランの解約条件や既払い金の扱いは、契約書(SPA)の文言だけで決まるわけではありません。ドバイではLaw No.19 of 2017(オフプラン登記を定めた Law No.13 of 2008 第11条の改正)が、買主が支払いを怠った場合にデベロッパーが留保できる金額の上限を、工事の完成度に応じて法律で定めています。契約にこれより買主に不利な条項があっても、原則として法律が優先します。
買主が支払えなくなったとき(ドバイ|Law 19/2017)
- 完成度80%超:デベロッパーは〔①契約を維持して残代金を請求〕〔②物件を競売にかけて回収〕〔③契約を解約して売買代金の最大40%を留保〕のいずれかを選べます。
- 完成度60〜80%:契約を解約し、売買代金の最大40%を留保。
- 完成度60%未満(着工済み):契約を解約し、売買代金の最大25%を留保。
- 未着工(デベロッパーの責によらない事由):払込額の最大30%を留保。
手続と返金:DLDが買主に通知し、30日間の是正期間が与えられます。是正されない場合、裁判・仲裁を経ずに契約解約とOqood(暫定登記)の抹消が行われます。留保上限を超えて支払い済みの金額は、解約から1年以内、または物件の再販から60日以内に買主へ返金されます。さらにRERAがプロジェクト自体を取り消した場合は、エスクローから全額返金。いずれの場合も買主は裁判・仲裁に訴える権利を保持します。
アブダビは別ルール(Law No.2 of 2025)
アブダビではLaw No.2 of 2025により、買主の債務不履行時、デベロッパーは法的手続き(書面通知・是正期間の付与・ADRECへの通知と友好的解決の試み)を踏めば裁判を経ずにSPAを解除できます。買主は暫定不動産登記(Interim Real Estate Register)から抹消され、ユニットは再販されます。エスクロー資金は法律で保護され、買主は裁判・仲裁の権利を保持します(返金は通常15営業日、違法な徴収は30日以内)。ビザと同様、解約・返金のルールも首長国(エミレーツ)ごとに異なる点に注意してください。
※ 留保割合・手続・期間は2026年時点の一般的な情報です。実際の適用は完成度・契約・当局の運用により異なります。具体的な事案は専門家・DLD/ADREC等の一次情報でご確認ください。
その他の確認ポイント(契約に共通する条項の型)
以下は、ドバイのオフプラン契約に共通して見られる条項の型です(特定の契約・当事者の情報は含みません)。実際の文言は契約ごとに異なるため、原本でのご確認をおすすめします。
- 署名・返送期限:提示後の署名・返送に期限があり、超過すると申込みが自動失効し、既払い金が没収される条項もあります。
- 手書き修正の禁止:契約書面への手書きの加筆・修正が無効とされる場合があります。修正は正式な変更手続きで行います。
- 建設進捗連動の分割払い・遅延損害:支払いが建設マイルストーンに連動し、AED建てのため円換算では為替リスクを伴います。支払い遅延に対する遅延損害金(例:月1%程度)が定められることもあります。
- 登録費用の負担:Oqood登録・DLD登記等の費用について、負担者(購入者負担が一般的)と、価格に含まれるか別途かをご確認ください。
- 完成予定日と不可抗力延長:引渡し予定日と、不可抗力による延長条項の範囲・上限をご確認ください。
- 面積・仕様・引渡し基準・瑕疵対応:実測面積の許容差、仕様変更権、引渡し時の検査、引渡し後の瑕疵対応期間(ディフェクト・ライアビリティ)の有無。
- 解約・没収条項:購入者都合・デベロッパー都合それぞれの解約条件と、既払い金の扱い。
- AML(資金源の表明)・情報共有同意:資金の出所に関する表明や、連絡先情報をグループ会社間で共有することへの同意条項。
- 準拠法・紛争解決:準拠法と管轄(ドバイ裁判所か、DIFC管轄が外れる場合があるか)。英語版とアラビア語版に齟齬がある場合の優先(英語版優先の定めが多く見られます)。
- 譲渡権の非対称:売主側に自由な権利譲渡権がある一方、購入者側の譲渡(転売)には条件が付くことがあります。
出典・参考
- ドバイ Law No.13 of 2008(暫定不動産登記)/Law No.19 of 2017(第11条改正・買主デフォルト時の解約と完成度別の留保上限)
- ドバイ Law No.8 of 2007(エスクロー口座)/Law No.9 of 2007(販売前の建設費20%拠出)
- アブダビ Law No.2 of 2025(デベロッパーのSPA解除権・買主債務不履行時)
- ドバイ土地局(DLD)/RERA:オフプラン登録(Oqood)・エスクロー制度に関する一般情報
- UAE・ドバイの不動産売買契約(SPA)一般に見られる条項類型に関する実務情報(匿名化・一般化)
※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。
関連ページ
よくあるご質問
70%払えば自由に転売できますか?
途中で払えなくなったら、払ったお金は戻りますか?
契約書はアラビア語と英語のどちらが優先しますか?
Oqood登録やDLDの費用は誰が負担しますか?
署名後すぐに返送しないとどうなりますか?
解約に裁判は必要ですか?
本記事は2026年6月11日現在の一般的な情報提供であり、個別の法律助言ではありません。最終的なご判断は、契約書原本のご確認とともに、お客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。