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LEGAL & TAX NOTES / DUBAI / 売買契約

税務・法務(一般情報)

ドバイ不動産 売買契約書(SPA)の注意点

監修:森 和孝|国際弁護士(UAE・日本・SG)・税理士 | 本記事は一般的な情報提供です

ドバイのクリークハーバーの夕景。クリークタワーの建設地一帯
ドバイ・クリーク・ハーバー(クリークタワー建設地一帯)

ドバイのオフプラン購入では、売買契約書(SPA/Sale and Purchase Agreement)に署名する前に確認すべき点がいくつもあります。本記事は、実際の契約に共通して見られる条項の『型』を、個人情報・取引情報を含まない形で一般化し、国際弁護士・税理士監修で整理したものです。なお、解約や既払い金の扱いには契約より優先する法律上のルール(ドバイ=Law No.19 of 2017)もあるため、その要点も併せて解説します(一般的な情報提供であり、個別の法律助言ではありません)。

40%留保上限(完成度60%超)
25%留保上限(60%未満・着工済み)
30日DLD通知後の是正期間
1年超過分の返金期限(または再販から60日)
ご確認ください(免責)

本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の法律・税務アドバイスではありません。売買契約(SPA)の実際の効力は各契約の文言により異なります。署名前に必ず契約書原本の条項をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。

まず確認すべき2点(最重要)

オフプランの売買契約書では、数ある条項のなかでも特に次の2点を、署名前に必ず確認することをおすすめします。

① 転売(アサインメント)の条件とNOC発行要件

支払い済みの割合だけでは転売できない場合があります。たとえば「累計50%以上を支払い、かつ直近の分割金の支払いが完了していること」が条件の場合、累計70%を支払っていても、次の分割金(例:10%)を支払うまでNOC(譲渡承諾書)が発行されず、転売できないことがあります。契約前に「転売に必要な累計支払割合」と「NOC発行の前提条件」をご確認ください。

② 支払いが続けられなくなった場合の既払い金

購入後に分割金を支払えなくなった場合、すでに支払った金額がどこまで戻るかは、契約書だけでなく法律で上限が定められています(ドバイ=Law No.19 of 2017。工事の完成度に応じて留保上限が変わる/次章で詳述)。契約にこれより不利な条項がないかを、署名前にご確認ください。

【重要】解約・既払い金は『法律』で上限が決まる(契約より優先)

オフプランの解約条件や既払い金の扱いは、契約書(SPA)の文言だけで決まるわけではありません。ドバイではLaw No.19 of 2017(オフプラン登記を定めた Law No.13 of 2008 第11条の改正)が、買主が支払いを怠った場合にデベロッパーが留保できる金額の上限を、工事の完成度に応じて法律で定めています。契約にこれより買主に不利な条項があっても、原則として法律が優先します。

買主が支払えなくなったとき(ドバイ|Law 19/2017)

  • 完成度80%超:デベロッパーは〔①契約を維持して残代金を請求〕〔②物件を競売にかけて回収〕〔③契約を解約して売買代金の最大40%を留保〕のいずれかを選べます。
  • 完成度60〜80%:契約を解約し、売買代金の最大40%を留保。
  • 完成度60%未満(着工済み):契約を解約し、売買代金の最大25%を留保。
  • 未着工(デベロッパーの責によらない事由):払込額の最大30%を留保。超過分は解約から60日以内に返金(他の段階と期限が違う)。

手続と返金:DLDが買主に通知し、30日間の是正期間が与えられます。是正されない場合、裁判・仲裁を経ずに契約解約とOqood(暫定登記)の抹消が行われます。留保上限を超えて支払い済みの金額は、解約から1年以内、または物件の再販から60日以内に買主へ返金されます(未着工の場合は解約から60日以内)。さらにRERAがプロジェクト自体を取り消した場合は、エスクローから全額返金。いずれの場合も買主は裁判・仲裁に訴える権利を保持します。

  1. 支払い遅延分割金の支払期日を超過
  2. DLDが買主に通知 → 30日の是正期間この期間内に支払えば契約は維持される
  3. 未是正なら解約・Oqood抹消裁判・仲裁を経ない
  4. 留保上限を超える分の返金解約から1年以内、または再販から60日以内(未着工の場合は解約から60日以内)
LAW No.19 OF 2017 / ART.11

留保上限を超えて支払い済みの金額は、解約から1年以内、または物件の再販から60日以内に買主へ返金される(未着工の場合は解約から60日以内)。RERAがプロジェクト自体を取り消した場合はエスクローから全額返金。

アブダビは別ルール(Law No.2 of 2025)

アブダビではLaw No.2 of 2025(2025年8月2日施行)と行政決定165号(2026年)により、買主の債務不履行時は、公証または書留の通知→60日の是正期間を経て、通知から15日後にデベロッパーがDMT(市町村交通局)へエスクロー受託者の証明付きで届け出、ADRECが和解を試み、是正されなければ30日の冷却期間を経て裁判によらずSPAを解除できます。買主は暫定不動産登記(Interim Real Estate Register)から抹消され、ユニットは再販されます。留保率は未着工なら全額返金、工事の進捗に応じて初期10%程度から完成度60%以上で最大40%まで段階的に上がり、買主が60%以上支払っている場合はADRECが個別に判断します。エスクロー資金は法律で保護され、買主は裁判・仲裁の権利を保持します(超過分の返金は15営業日以内、エスクロー外で徴収された金額は30日以内に返金)。ビザと同様、解約・返金のルールも首長国(エミレーツ)ごとに異なる点に注意してください。

DUBAI / LAW 19/2017

完成度別の留保上限(25〜40%)。DLD通知→30日是正→裁判なしで解約。超過分は1年以内に返金。

ABU DHABI / LAW 2/2025

Law 2 of 2025(2025年8月2日施行)+行政決定165号(2026年): 公証または書留の通知→60日の是正期間→DMT届出・ADREC和解・30日の冷却期間を経て裁判によらず解除。留保率は未着工なら全額返金・進捗に応じ最大40%。超過分の返金は15営業日以内、エスクロー外の徴収は30日以内に返金。

※ 留保割合・手続・期間は2026年時点の一般的な情報です。実際の適用は完成度・契約・当局の運用により異なります。具体的な事案は専門家・DLD/ADREC等の一次情報でご確認ください。

留保できる上限(ドバイ|Law No.19 of 2017)

40%完成度80%超
維持/競売/解約を選択
40%完成度60〜80%
解約
25%完成度60%未満
解約
30%未着工
払込額に対する上限
工事の完成度デベロッパーが留保できる上限契約の扱い
完成度80%超売買代金の最大40%〔①契約を維持して残代金を請求〕〔②物件を競売にかけて回収〕〔③契約を解約〕のいずれかを選べる
完成度60〜80%売買代金の最大40%契約を解約
完成度60%未満(着工済み)売買代金の最大25%契約を解約
未着工(デベロッパーの責によらない事由)払込額の最大30%解約。超過分は解約から60日以内に返金

その他の確認ポイント(契約に共通する条項の型)

以下は、ドバイのオフプラン契約に共通して見られる条項の型です(特定の契約・当事者の情報は含みません)。実際の文言は契約ごとに異なるため、原本でのご確認をおすすめします。

  • 署名・返送期限:提示後の署名・返送に期限があり、超過すると申込みが自動失効し、既払い金が没収される条項もあります。
  • 手書き修正の禁止:契約書面への手書きの加筆・修正が無効とされる場合があります。修正は正式な変更手続きで行います。
  • 建設進捗連動の分割払い・遅延損害:支払いが建設マイルストーンに連動し、AED建てのため円換算では為替リスクを伴います。支払い遅延に対する遅延損害金(例:月1%程度)が定められることもあります。
  • 登録費用の負担:Oqood登録・DLD登記等の費用について、負担者(購入者負担が一般的)と、価格に含まれるか別途かをご確認ください。
  • 完成予定日と不可抗力延長:引渡し予定日と、不可抗力による延長条項の範囲・上限をご確認ください。
  • 面積・仕様・引渡し基準・瑕疵対応:実測面積の許容差、仕様変更権、引渡し時の検査、引渡し後の瑕疵対応期間(ディフェクト・ライアビリティ)の有無。
  • 解約・没収条項:購入者都合・デベロッパー都合それぞれの解約条件と、既払い金の扱い。キャンセル物件の買い方と、やめる側の法定ルールはオフプランのキャンセルへ。
  • AML(資金源の表明)・情報共有同意:資金の出所に関する表明や、連絡先情報をグループ会社間で共有することへの同意条項。
  • 準拠法・紛争解決:準拠法と管轄(ドバイ裁判所か、DIFC管轄が外れる場合があるか)。英語版とアラビア語版に齟齬がある場合の優先(英語版優先の定めが多く見られます)。
  • 譲渡権の非対称:売主側に自由な権利譲渡権がある一方、購入者側の譲渡(転売)には条件が付くことがあります。

確認ポイント一覧

条項の型確認すべき点
署名・返送期限提示後の署名・返送に期限があり、超過すると申込みが自動失効し、既払い金が没収される条項もある
手書き修正の禁止契約書面への手書きの加筆・修正が無効とされる場合がある。修正は正式な変更手続きで行う
建設進捗連動の分割払い・遅延損害支払いが建設マイルストーンに連動し、AED建てのため円換算では為替リスクを伴う。遅延損害金(例:月1%程度)が定められることもある
登録費用の負担Oqood登録・DLD登記等の費用の負担者(購入者負担が一般的)と、価格に含まれるか別途か
完成予定日と不可抗力延長引渡し予定日と、不可抗力による延長条項の範囲・上限
面積・仕様・引渡し基準・瑕疵対応実測面積の許容差、仕様変更権、引渡し時の検査、引渡し後の瑕疵対応期間(ディフェクト・ライアビリティ)の有無
解約・没収条項購入者都合・デベロッパー都合それぞれの解約条件と、既払い金の扱い

出典・参考

  • ドバイ Law No.13 of 2008(暫定不動産登記)/Law No.19 of 2017(第11条改正・買主デフォルト時の解約と完成度別の留保上限)
  • ドバイ Law No.8 of 2007(エスクロー口座)/Law No.9 of 2007(販売前の建設費20%拠出)
  • アブダビ Law No.2 of 2025(デベロッパーのSPA解除権・買主債務不履行時)
  • ドバイ土地局(DLD)/RERA:オフプラン登録(Oqood)・エスクロー制度に関する一般情報
  • UAE・ドバイの不動産売買契約(SPA)一般に見られる条項類型に関する実務情報(匿名化・一般化)

※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。

関連ページ

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よくあるご質問

70%払えば自由に転売できますか?
必ずしも自由には転売できません。転売(アサインメント)には累計支払割合の下限に加え、直近分割金の完了などの追加条件が課され、条件を満たすまでNOC(譲渡承諾書)が発行されないことがあります。契約書で「転売に必要な累計支払割合」と「NOC発行条件」を事前にご確認ください。
途中で払えなくなったら、払ったお金は戻りますか?
契約の文言だけでなく、ドバイでは法律(Law No.19 of 2017)でデベロッパーが留保できる上限が工事の完成度に応じて定められています。たとえば完成度60〜80%なら売買代金の最大40%、60%未満なら最大25%、未着工なら払込額の最大30%まで。これを超えて支払い済みの金額は、解約から1年以内または再販から60日以内(未着工の場合は解約から60日以内)に返金されます。RERAがプロジェクトを取り消した場合は全額返金です(アブダビはLaw No.2 of 2025で別ルール)。
契約書はアラビア語と英語のどちらが優先しますか?
多くのSPAでは、英語版とアラビア語版に齟齬がある場合に一方を優先する条項が置かれます(実務上は英語版優先が多く見られます)。どちらが優先するか、署名前に条項でご確認ください。
Oqood登録やDLDの費用は誰が負担しますか?
一般には購入者負担となることが多いですが、価格に含まれるか別途かを含め契約により異なります。費用の負担者と金額の目安を事前にご確認ください。
署名後すぐに返送しないとどうなりますか?
契約に署名・返送の期限が定められ、超過すると申込みが自動失効し、場合によっては既払い金が没収される条項もあります。提示された期限と超過時の扱いを必ずご確認ください。
解約に裁判は必要ですか?
ドバイ(Law No.19 of 2017)では、DLDの通知後に買主へ30日の是正期間を与え、是正されなければ裁判・仲裁を経ずに解約・登記抹消ができます。アブダビ(Law No.2 of 2025)も、所定の手続き(通知・是正期間・ADRECへの通知)を経れば裁判によらず解除が可能です。いずれの場合も買主は裁判・仲裁に訴える権利を保持します。
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本記事は2026年6月11日現在の一般的な情報提供であり、個別の法律助言ではありません。最終的なご判断は、契約書原本のご確認とともに、お客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。

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