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税務・法務(一般情報)

ドバイ移住の前に、日本を出る時点で税金がかかる — 国外転出時課税(出国税)と、仮想通貨が対象になる日【2026】

執筆:森 和孝(税理士・国際弁護士) | 本記事は一般的な情報提供です

ドバイに移住すれば所得税もキャピタルゲイン税もゼロになります。ただし、日本を出るその瞬間に、日本側で税金が発生する場合があります。

ご確認ください(免責)

本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。税制・実務は改正され得るため、結論はお客様の状況によって異なります。最新かつ個別の判断は、必ず専門家・税務署にご相談ください。

国外転出時課税、通称「出国税」です。1億円以上の有価証券等を持ったまま非居住者になると、実際には売っていない含み益に対して、売ったものとみなして所得税15.315%が課税されます。2015年7月に導入された制度で、含み益を抱えたままキャピタルゲイン非課税国へ移ってから売る、という節税を封じるためのものです。

移住の相談で最も見落とされるのがこの制度です。UAE側の税制ばかり調べていて、日本を出る手続きの段階で数千万円の納税が必要になると分かる、というケースがあります。

1億円対象資産の判定ライン
15.315%含み益にかかる所得税(復興特別所得税込)
最長10年納税猶予の期間(原則5年+延長5年)
5年以内帰国すれば課税を取り消せる期限

1. 自分が対象かどうか — 2つの条件を両方満たすか

次の両方に当てはまる人だけが対象です(所得税法60条の2)。

#条件
1国外転出の時点で、対象資産の合計が1億円以上
2国外転出の日前10年以内に、日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年超

どちらか一方でも外れれば適用されません。条件2があるため、日本に来て5年以内の外国籍の方は基本的に対象外です(在留資格が「経営・管理」「法律・会計業務」「企業内転勤」等の期間は、国内居住期間に算入されません)。

1億円は「含み益」ではなく「時価の合計」で判定します。 含み損のある銘柄も合計に入れます。ここを誤解して「利益は出ていないから関係ない」と考える方がいますが、判定は時価総額です。

2. 何が対象で、何が対象外か

対象になるもの対象にならないもの
株式(非上場株式も含む)不動産(日本・海外とも)
投資信託・ETF預金・現金
NISA口座内の有価証券暗号資産(現行制度では対象外)
外国株式生命保険
匿名組合契約の出資持分貴金属・美術品
未決済の信用取引・デリバティブ

ドバイ移住との関係で重要な点が3つあります。

不動産は対象外です。 日本の不動産を持ったまま出国しても、出国税はかかりません。ただし出国後に売却すると、非居住者としての課税(源泉徴収を含む)が別途あります。ドバイの不動産を買うために日本の不動産を売るなら、売る順序とタイミングで税額が変わります

非上場株式が対象です。 自社株を持つ経営者が最も影響を受けます。上場していなくても評価額で1億円を超えることは珍しくなく、しかも売却して現金化できないので、納税資金の手当てが要ります。

暗号資産は現行では対象外です。 ただし2026年7月に成立した金商法等改正で暗号資産は「金融商品」に位置づけが変わっており、近い将来、対象資産に加えられると当社は予測しています

2-2. 仮想通貨で資産を作った方へ — 動く時期の問題

暗号資産が対象外である今は、1億円分のビットコインを持ったまま出国しても出国税はかかりません。株式で1億円なら課税されるのに、暗号資産なら課税されない。この差は制度上の隙間であって、恒久的なものではありません。

いま起きている制度変更を並べると、方向は明確です。

時期何が起きたか
2026年3月31日改正所得税法が成立。暗号資産に申告分離課税20.315%を導入(適用は2028年1月が有力)
2026年7月15日金商法等改正が成立。暗号資産が資金決済法上の「決済手段」から金商法上の「金融商品」へ位置づけ変更
今後令和8年度税制改正の解説でも「暗号資産が国外転出時課税の対象資産となるか確認が必要」と指摘されている

株式やFXと同じ「金融商品」の枠に入った以上、出国税の対象資産に加えられない理由がなくなっていきます。対象に加わる改正が入れば、施行日以後に出国する人から適用されます。 そのとき、含み益に対する15.315%が発生します。

もう一段の論点があります。2028年に分離課税が始まるまでは、暗号資産の売却益は総合課税で最大55.945%です。 つまり動く時期によって、こう変わります。

動く時期売却益への課税出国税
今(2026年)日本で売れば最大55.945%/UAE居住者になってから売れば0%かからない(現行)
2028年以降日本の登録業者で売れば20.315%(海外取引所・DeFiは総合課税のまま)対象化されていれば、かかる

暗号資産で1億円規模の含み益を持つ方にとって、「出国税が対象外のうちに、非居住者として売れる状態を作る」ことに時間的な価値があります。 ただし、日本の非居住者になるには生活の本拠を実際に移す必要があり、形式だけでは認められません。制度の詳細と、移住後の設計は仮想通貨の税金にまとめています。

EXIT TAX — SCOPE OF ASSETS対象になる(1億円の判定に入る)対象にならない株式(非上場株式も含む)投資信託・ETFNISA口座内の有価証券外国株式匿名組合契約の出資持分未決済の信用取引・デリバティブ不動産(日本・海外とも)預金・現金暗号資産(現行制度では対象外)生命保険貴金属・美術品
出国税の対象資産と対象外資産(§2の表と同値)

3. いくらかかるか

計算はシンプルです。

計算式

課税所得 = 出国時の時価 − 取得価額
税額 = 課税所得 × 15.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315%)

: 取得価額3,000万円の株式が、出国時に1億2,000万円になっている場合

  • 含み益 9,000万円 × 15.315% = 約1,378万円
  • 株を1株も売っていない状態で、この額の納税義務が生じます

時価をいつ測るかは、納税管理人を選任したかで変わります。

対象資産の評価時点申告期限
納税管理人を選任する国外転出日の時価出国翌年の3月15日
選任しない出国予定日の3か月前の時価出国の時まで

選任しない場合、3か月前の株価で評価され、しかも出国前に申告と納税を終える必要があります。実務上は納税管理人を選任するのが原則です。

4. 納税猶予 — 現金が無くても出国できる

売っていない資産に課税されるので、手元に現金が無いことがあります。そのための制度が納税猶予です。

手続き(3つとも必要)

  1. 国外転出の時までに納税管理人の届出を提出する
  2. 確定申告書に納税猶予を受ける旨を記載し、必要書類を添付する
  3. 担保を提供する(対象の有価証券そのものを担保にできる)

効果

  • 原則5年間の納税猶予。延長申請でさらに5年、最長10年
  • 猶予期間中は毎年12月31日時点の対象資産について、翌年3月15日までに継続適用届出書を提出する義務がある。これを怠ると猶予が打ち切られる
  • 猶予期間中は利子税がかかる
TAX DEFERRAL — TIMELINE納税猶予 原則5年延長申請でさらに5年(最長10年)出国担保提供+納税管理人5年10年帰国(5年/延長時10年以内)+対象資産を保有 → 課税を取り消せる(帰国の日から4か月以内に更正の請求)帰国しない → 猶予期限までに納付(猶予中は毎年3月15日までに継続適用届出書)
納税猶予の時系列(§4・§5と同値。原則5年+延長5年、帰国で取消し)

5. 帰国すれば取り消せる

出国から5年以内(猶予を10年に延長した場合は10年以内)に帰国し、対象資産を売らずに持っていれば、課税そのものを取り消せます。

  • 帰国の日から4か月以内に更正の請求を行う
  • 「帰国」とは、日本国内に住所を有するか、1年以上継続して居所を有することをいう
  • 猶予期間中に対象資産を売った場合は、その分の税額を納付する。売却額が出国時の時価を下回っていれば、減額の更正請求ができる

ドバイに数年住んで日本に戻る可能性がある方は、この取消しを前提に猶予を使う設計が成り立ちます。戻らないと決めているなら、出国前に売って通常の20.315%で課税を終わらせるほうが、結果的に軽くなる場合があります(出国税は15.315%ですが、猶予中の利子税と手続きの負担が乗ります)。

6. 相続・贈与でも発動する

見落とされやすいのがここです。出国しなくても、1億円以上の対象資産を持つ日本居住者が、国外に住む親族に贈与・相続した場合にも同じ課税が起きます。

  • 贈与: 贈与した側(日本居住者)が申告・納税する
  • 相続: 相続人が準確定申告を行う。期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内
  • 1億円の判定は、非居住者が受け取った分だけでなく、被相続人が持っていた対象資産の合計で行う

家族の一部が先にドバイへ移っている場合、この形で発動することがあります。相続の全体像はドバイ不動産の相続へ。

7. ドバイ移住のスケジュールにどう組み込むか

時期やること
移住の6か月前対象資産の棚卸し(非上場株式・NISAを含む)。1億円を超えるかの判定
4〜5か月前超える場合、①出国前に売る ②納税猶予を使う ③1億円未満まで減らす の比較。税理士と設計
3か月前納税管理人を選任しない場合の評価基準日。選任するなら、この時点までに決めておく
出国まで納税管理人の届出。猶予を使うなら担保の準備
出国翌年3月15日確定申告
毎年3月15日猶予中は継続適用届出書

移住の準備は住居やビザから始める方が多いのですが、税務の設計を先に済ませないと、出国日を動かせなくなります。

まとめ

出国税は、1億円以上の有価証券等を持つ人だけの制度です。該当しない方には関係がありません。ただし該当する場合、移住の日程そのものを縛ります。非上場株式を持つ経営者は特に、評価額で1億円を超えていることに出国直前まで気づかないことがあります。

当社は日本の税理士として日本側の設計を、UAE法弁護士として移住後の法務を、現地ブローカーとして住まいと不動産を扱っています。移住の順序から相談を受けています。無料相談へ。

出典・参考

  • 所得税法60条の2(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)
  • 国税庁 タックスアンサー No.1478(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)
  • 国税庁「国外転出時課税制度」FAQ
  • 改正所得税法(令和8年・2026年3月31日成立)・金融商品取引法等改正法(2026年7月15日成立)

※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。

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よくあるご質問

出国税はいくらから対象ですか?
対象資産の時価合計が1億円以上、かつ出国前10年以内に日本に5年超住んでいた場合です。両方満たさなければ対象外です
不動産は対象になりますか?
なりません。対象は有価証券等で、不動産・預金・現金は含まれません。ただし出国後に日本の不動産を売れば、非居住者としての課税が別にあります
暗号資産は対象ですか?
現行制度では対象外です。ただし2026年に暗号資産が金商法上の「金融商品」になったため、今後対象に加えられる可能性が高いと当社は見ています。対象化されれば施行日以後に出国する人から適用されるため、動く時期が結果を左右します
現金が無くても払わないといけませんか?
納税管理人の届出と担保の提供で、最長10年の猶予が受けられます
ドバイから日本に戻ったらどうなりますか?
出国から5年(延長時10年)以内に帰国し、対象資産を保有していれば課税を取り消せます。帰国から4か月以内に更正の請求が必要です
1億円未満なら何もしなくていいですか?
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