JAPAN × UAE BUSINESS MAP
343の拠点から見る、日本企業とUAEの現在。
公開日 最終更新日
資源を支える。地域をつなぐ。暮らしと街の中へ入る。
日本企業のUAE進出は、石油・天然ガスや商社の時代から、金融、小売、食品、建築、都市開発、デジタル分野へ広がりました。JETROが2026年に公表した資料によると、2024年時点のUAEの日系企業拠点数は343。うち在ドバイ総領事館の管轄地域が301、在UAE日本国大使館の管轄地域が42で、中東では最多です。
企業名を並べるだけでは、この市場の姿は見えません。どの産業に日本の強みがあり、どのブランドが日常へ入り、どこに新しい参入余地があるのか。公式統計、各社の発表、現地での運営観察を分けて読み解きます。
情報確認日
CURRENT SCALE
最新公表値は343拠点。ドバイに約88%が集まる
| 指標 | 最新確認値 | 対象年・注記 |
|---|---|---|
| UAEの日系企業拠点数 | 343 | 2024年。外務省調査を基にJETRO作成 |
| 在ドバイ総領事館管轄 | 301 | UAE全体の約88% |
| 在UAE日本国大使館管轄 | 42 | 主にアブダビ側 |
| UAEの在留邦人数 | 4,775人 | 2024年。中東全体の約半数 |
| 日本の対UAE直接投資 | 1,451億円 | 2024年、国際収支ベース・ネット・フロー |
| 黒字を見込む企業 | 83.3% | 2025年度JETRO調査のUAE回答企業 |
343はブランド数や店舗数ではなく、海外進出日系企業の「拠点数」です。1社が複数の拠点を持つ場合もあり、レストランや店舗の数とは一致しません。また、2023年10月時点の358という旧公表値ではなく、現時点で確認できる2024年の343を採用しています。
数が一時的に減って見えることだけで、市場の後退とは判断できません。JETROの2026年資料では、UAEは引き続き中東最大の日系企業集積地です。2025年のJETRO調査でもUAE回答企業の83.3%が黒字を見込み、地域拠点としての厚みは維持されています。
INDUSTRY MAP
「何社あるか」だけでなく、「何を担っているか」を見る
業種別の最新拠点数を網羅した公的な一覧は確認できません。そのため、ここでは企業数の推計を作らず、投資統計、JETRO調査、各社の公式発表という3つのレンズで産業構成を読みます。
1 エネルギー・資源
日本とUAEの関係を長く支えてきた中核分野です。INPEXはアブダビの油田権益と操業へ関わり、JODCOを通じて長期的な事業基盤を築いてきました。2024年の日本からUAEへの直接投資では、鉱業が648億円を占めています。
2 商社・卸売・地域統括
三菱商事はドバイに中東・アフリカ地域の統括機能を置き、アブダビにも拠点を持ちます。UAEは国内市場だけでなく、中東、アフリカ、南アジアへ商品と事業をつなぐ再輸出拠点です。2024年の直接投資では卸売・小売が535億円を占めました。
3 金融・専門サービス
三菱UFJ銀行、三井住友銀行などがドバイ国際金融センター(DIFC)を含む域内拠点を置いています。企業金融、プロジェクト金融、貿易、資産管理など、進出企業を支える基盤です。法律、会計、税務、調査、採用などの専門サービスも、企業集積の拡大とともに必要性が高まります。
4 小売・生活・文化
ダイソー、無印良品、ヨックモック、紀伊國屋書店などは、UAEの暮らしの中で日本ブランドに触れる接点をつくりました。成功しているのは「日本製だから売れる」という単純なモデルではありません。価格、品ぞろえ、贈答、立地、多言語接客を現地の生活へ合わせています。
5 建築・都市開発
日建設計はドバイに長期拠点を持ち、ワン・ザアビールなどを通じて都市の象徴へ関わりました。隈研吾建築都市設計事務所もドバイで計画を進めています。設計だけでなく、内装、照明、素材、ランドスケープ、環境技術、施工管理まで、日本企業が参加できる裾野は広い分野です。
6 不動産・ホテル・事業投資
霞ヶ関キャピタルのように、UAE・ドバイで用地や開発管理へ踏み込む企業も現れました。店舗や駐在員事務所を置く進出から、現地の資産と運営へ直接関わる進出へと形が広がっています。
COMPANIES TO KNOW
UAEで存在感を築いた日本企業・組織
| 分野 | 企業・組織 | UAEで確認できる主な展開 |
|---|---|---|
| エネルギー | INPEX/JODCO | アブダビの油田権益・操業への長期参画 |
| 商社 | 三菱商事 | ドバイの中東・アフリカ統括機能、アブダビ拠点 |
| 金融 | 三菱UFJ銀行 | ドバイ国際金融センター(DIFC)拠点 |
| 金融 | 三井住友銀行 | DIFCを含むドバイ拠点 |
| 小売 | ダイソー | 公式情報でUAE50店舗。中東1号店は2004年 |
| 生活用品 | 無印良品 | UAE公式店舗網とオンライン販売 |
| 菓子 | ヨックモック | ドバイの商業施設で公式店舗を展開 |
| 書店 | 紀伊國屋書店 | 2008年進出。ドバイ・モールの多言語書店 |
| 建築 | 日建設計 | ドバイ拠点、ワン・ザアビールなど |
| 建築 | 隈研吾建築都市設計事務所 | ウェディアン・ザ・カナル計画 |
| 不動産 | 霞ヶ関キャピタル | ドバイで開発用地・開発管理事業 |
これは全343拠点の名簿ではなく、産業の広がりを理解するための代表例です。店舗数、営業状況、建設中プロジェクトは変動するため、公開時と更新時に各社の公式情報を再確認します。
RETAIL & CULTURE
日本ブランドは「日本人向け」から、多国籍都市の日常へ
ダイソー — 50店舗へ広がった発見型の小売
ダイソー・ミドルイーストの公式情報では、UAEに50店舗を展開しています。文具、収納、台所用品、玩具、季節商品までを一つの店で探せる品ぞろえは、多国籍な住民が暮らすUAEと相性が良く、日本人向けの店ではなく日常使いの小売として定着しました。
無印良品 — 暮らし全体を編集する
無印良品は家具、収納、衣服、食品までを横断して展開しています。転居が多く、多様な住居タイプが共存するUAEでは、商品単体だけでなく、生活空間を一つの思想で整えられることにも価値があります。
ヨックモック — 贈答文化と日本の菓子
ラマダン、イード、結婚、出産、企業訪問など、UAEには菓子を贈る機会が多くあります。日本らしい包装、分けやすい個包装、品質の安定した焼菓子は、土産ではなく現地の贈答習慣の中に入る可能性を持っています。
紀伊國屋書店 — 多言語都市の文化拠点
紀伊國屋書店は2008年にドバイへ進出しました。現在もドバイ・モールで、英語、アラビア語、フランス語、ロシア語、日本語などの書籍を扱っています。日本書籍を販売するだけでなく、言語や関心をまたいで人が集まる文化の入口をつくりました。
JAPANESE FOOD NOW
日本食材は手に入りやすくなった。ただし、流通の主役は日系スーパーだけではない
近年のUAEでは、米、調味料、菓子、冷凍食品、飲料など、日本食材の選択肢が大きく増えました。ここで実態を正確に表すには、「日系スーパーマーケットの進出が相次いだ」と説明するだけでは不十分です。
日本食材専門のディーンズ富士屋に加え、韓国系の1004 Gourmet、中国系小売ブランドのWEMARTなど、アジア系スーパーが日本の商品を広く扱うようになったことが、入手しやすさを押し上げています。WEMARTは公式情報で、中国商品だけでなく日本、韓国、東南アジアの商品を扱うと説明しています。JETROの2025年視察でも、ディーンズ富士屋、1004 Gourmet、カルフール、UAE最大規模の日本食卸であるSummit Tradingが調査対象になりました。
つまり、「日本食材が増えたこと」と「日系スーパーの進出が増えたこと」は同じではありません。中国系・韓国系を含む広域アジア流通、現地ハイパーマーケット、日本食専門店、卸売事業者が重なり、売り場を広げています。この違いは、日本企業が新規参入するときの販路設計にも直結します。
日本食レストランは増加し、業態も細分化している
JETROの日本食レストラン市場調査では、UAEの日本食レストランは2013年の約140店から2022年の約340店へ増えました。2025年には、ドバイで日本式カフェの開業が相次ぎ、寿司やラーメンだけでなく、喫茶、抹茶、スペシャルティコーヒー、ベーカリー、菓子へと業態が広がっています。
ここでいう「日本食レストラン」は、日本企業や日本人が経営する店舗だけを意味しません。現地企業や他国の事業者による日本食業態も含みます。市場の拡大と、日系企業の拠点数は別の指標として読み分けます。
FIELD NOTE — 開業が増える一方、撤退・業態変更も起きる
森 和孝のUAE在住・現地運営観察
以下は政府統計による店舗数の時系列ではなく、ドバイで事業者、店舗、来訪者の動きを継続して見てきた現地観察です。
ドバイでは日本食の新規開業が続く一方、近時は一部店舗の撤退、休業、業態変更も目につきます。人気の有無だけでは説明できず、次のようなドバイ特有の運営条件が重なるためです。
- 出店時の資金負担が大きい — テナントの保証金、前払い賃料、内装、厨房、許認可にまとまった資金が必要で、開業前からキャッシュが固定されやすい。
- 内装と開業工程が遅れやすい — 設計変更、施工会社の進行、ビル管理者や行政の承認が連動し、予定した開業日が後ろへずれることがある。
- 夏と涼しい季節で人の動きが大きく違う — 夏季は休暇や一時帰国が重なり、観光・外食・施工・採用の動きが鈍る一方、涼しい季節には来訪とイベントが増える。年間平均だけでは資金繰りを読み違えやすい。
- 地域情勢の影響を短期的に受ける — イラン情勢が緊迫した局面では、観光客や予約の動きが一時的に弱まったと現場では感じられた。ただし、これをUAE観光の構造的な減少と断定する統計はなく、短期的な変動として扱う必要がある。
したがって、「日本食が人気だから出せば成功する」とも、「撤退があるから市場が縮小した」とも言い切れません。立地別の季節変動、少なくとも1年分の運転資金、内装遅延への余裕、デリバリーと店内売上の配分、食材調達と廃棄率まで設計して初めて、人気を継続事業へ変えられます。
ARCHITECTURE & CITY
日本の設計が、UAEの都市風景へ入る
日建設計は2007年にドバイ支店を開設し、2022年には現地法人を設立しました。代表例の一つが、2棟のタワーを空中の「ザ・リンク」で結ぶワン・ザアビールです。
隈研吾建築都市設計事務所の公式プロジェクト情報では、ドバイの「ウェディアン・ザ・カナル」が進行中です。日本の建築・設計分野には、作品を輸出するだけでなく、地域の気候、素材、施工体制、多国籍チームと長期的に向き合う力が求められます。
THE COMMUNITY
日本人経営者が、ドバイに集まる規模
海外を拠点に活動する日本人起業家のネットワーク WAOJE の世界大会「Global Venture Forum 2025」が、2025年9月21日から23日にかけてドバイで開催されました。本会議の来場は2日間合計740名、前夜祭とオプショナルツアーを含めた参加者は延べ約900名。主催関係者の発表では、過去最大規模の日系ビジネスイベントとされています。
前夜祭は砂漠で行われ、約300名がランドクルーザー50台超に分乗して会場へ向かいました。
実行委員長はエミネンス・ラックス代表の森 和孝(WAOJEドバイ支部 初代理事長)、副実行委員長は同社CMOの徳沢 理絵(同支部 初代理事)が務め、エミネンス・ラックスはプラチナスポンサーとして参画しました。

拠点数だけでは見えない「人が集まる規模」も、この市場の厚みを示す指標の一つです。


情報確認日
WHAT WORKS
UAEで事業を続けるための7つの視点
- 国内市場と地域拠点の二つで考える — UAE国内だけでなく、GCC、中東、アフリカ、南アジアへの展開を設計する。
- 現地で長く運営する — 出店や受注をゴールにせず、顧客の声と市場変化を継続して拾う。
- 良いパートナーを選ぶ — 販路、契約、採用、行政手続きを実行できる相手と組む。
- 日本品質を現地の使い方へ翻訳する — 贈答、家族構成、住環境、気候、宗教、言語の文脈で価値を伝える。
- 開業までの遅れを資金計画へ入れる — 保証金、前払い、内装、承認の遅れを例外ではなく計画の一部にする。
- 季節差を月次で見る — 夏季と観光シーズンを同じ平均値で扱わない。
- 多国籍市場として考える — UAE国民と日本人だけでなく、アジア、欧州、中東、アフリカの顧客へ届く設計にする。
THE NEXT OPENINGS
まだ、入る余地は大きい
- 食品のB2B供給 — 冷凍、常温、ハラール対応、業務用食材、品質管理、共同配送。
- 外食の運営基盤 — 厨房設計、採用・教育、原価管理、デリバリー最適化、複数店舗運営。
- 贈答・菓子・食文化 — 季節行事と企業贈答へ、日本らしい品質と物語を提案する。
- 建築・内装・ランドスケープ — 設計、照明、家具、素材、環境技術を一体で提供する。
- 住宅管理・改修・設備保守 — 引渡し後の品質管理、修繕、清掃、省エネを継続サービスにする。
- 健康・美容・ウェルネス — 予防、検診、高齢化、美容、回復を日本の運用品質と組み合わせる。
- 教育・子ども向けサービス — STEAM、習い事、職業教育、ものづくり体験を多言語で届ける。
- 水・暑熱・省エネルギー — 高温環境や水資源の課題へ、設備、素材、運用技術で応える。
- B2Bの品質管理 — 検査、物流、食品安全、工場運営など、見えにくい業務を強くする。
先行企業の実績を称えながら、次の日本企業が「日本で成功したものをそのまま持ち込む」のではなく、UAEで必要とされる価値を一緒につくる余地は、まだ大きく残っています。
よくある質問
UAEには何社の日系企業がありますか?
最新確認値は2024年の343拠点です。うち在ドバイ総領事館管轄が301、在UAE日本国大使館管轄が42です。企業ブランド数や店舗数ではなく、外務省調査に基づく企業拠点数です。
UAEでは日本食材を買いやすくなりましたか?
はい。日本食専門店に加え、中国系のWEMART、韓国系の1004 Gourmet、現地ハイパーマーケットなどが日本商品を扱うため、入手経路が増えています。ただし、これは日系スーパーの進出数が同じ割合で増えたことを意味しません。
ドバイの日本食レストランは増えていますか?
JETRO調査では、UAEの日本食レストランは2013年の約140店から2022年の約340店へ増えました。2025年にも日本式カフェの開業が相次いでいます。一方、個別店舗では撤退や業態変更もあり、出店数と事業の継続性は分けて見る必要があります。
日本企業がUAEへ進出するとき、最初に重要なことは?
商品や技術だけでなく、進出形態、契約、現地パートナー、販売経路、採用、季節差、開業遅延、運転資金を一つの運営計画として考えることです。法務・税務・会社設立の個別判断は、最新の公的情報と専門家の確認が必要です。