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2007年ドバイ法第8号(ドバイ首長国における不動産開発のためのエスクロー口座に関する法律)

監修:森 和孝(国際弁護士・税理士)

ドバイ首長国 法令 現行(施行中)

基本情報

正式名称(アラビア語正文)قانون رقم (8) لسنة 2007 بشأن حسابات ضمان التطوير العقاري في إمارة دبي
公式英語名Law No. (8) of 2007 Concerning Escrow Accounts for Real Estate Development in the Emirate of Dubai
日本語参考名2007年ドバイ法第8号(ドバイ首長国における不動産開発のためのエスクロー口座に関する法律)
種別法律(法令)
番号/年Law No.8 of 2007
発出日2007-05-06
官報掲載日2007-06-28(ドバイ政府官報第323号(第41年))
施行日2007-06-28
状態現行(施行中)
最終改正
改正確認日2026-07-16
発出主体ドバイ首長国 (AE-DU)
地理的適用範囲ドバイ首長国
人的適用範囲首長国内の不動産開発プロジェクトにおいてユニットをオフプランで販売し、買主または融資者から支払いを受けるデベロッパー(第3条)
現行性の確認DLP上、本法を直接改正する法令は確認できず。DLD Circular 01-2026(文書日付2026-01-05、DLD掲載2026-01-08)が本法の現行遵守を再確認している。

要点解説

本法は、ドバイ首長国でオフプランのユニットを販売し、買主またはプロジェクト融資者から支払いを受けるデベロッパーに適用される、エスクロー口座制度の中核法です。デベロッパーに、DLDの登録簿への登録と免許取得(第4条)、書面契約に基づくプロジェクト名義のエスクロー口座開設(第7条)、プロジェクトごとの口座分別(第9条2項)を求めています。口座資金は法文上、当該プロジェクトの建設に専ら充てられ、デベロッパーの債権者による差押えの対象になりません(第9条1項)。

完成証明書の取得後も各エスクロー口座の総額の5%が留保され、ユニットが買主名義で登記されてから1年後にデベロッパーへ解放されます(第14条)。プロジェクトが完成しない緊急事態では、エスクロー・エージェントがDLDと協議し、預入者の権利保全、プロジェクト完成の確保、または預入者への返金に必要な措置を取ります(第15条)。ただし、この制度は資金の分別管理と目的外利用防止を図るものであり、政府またはエスクロー・エージェントが全額回収を無条件に保証する制度ではありません。正式なプロジェクト取消しと返金・清算には、Law 13/2008、その現行改正、ECR 6/2010、Decree 33/2020も関係します。

第16条に列挙された無免許開発、免許取得のための虚偽資料、詐欺的プロジェクトの販売申出、預託金の横領等には、拘禁およびAED 100,000(約440万円)以上の罰金、またはいずれか一方が定められています。これは全ての違反に一律に適用される規定ではありません。エスクロー口座の未開設・未入金等には、ECR 25/2009による別の行政罰もあります。

日本語参考訳

前文 ドバイ首長ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームは、民法(1985年連邦法第5号・改正含む)、不動産登記法(2006年ドバイ法第7号)、非UAE国民の不動産所有可能区域を定める2006年規則第3号を検討のうえ、本法を発布する。

第1章 定義および総則

第1条(引用名) 本法は「2007年ドバイ法第8号(ドバイ首長国における不動産開発のためのエスクロー口座に関する法律)」として引用される。

第2条(定義) 文脈上別段の意味が示されない限り、次の語は以下の意味を持つ。

第3条(適用範囲) 本法は、首長国内の不動産開発プロジェクトにおいてユニットをオフプランで販売し、当該ユニットについて買主または融資者から支払いを受けるデベロッパーに適用される。

第4条(デベロッパー登録) 局は「不動産デベロッパー登録簿」を備え、首長国で不動産開発業に従事する免許を受けたデベロッパーの名称を記載する。デベロッパーは、同登録簿に記録され、かつ所管当局の要件に従い免許を受けなければ、当該事業に従事してはならない。

第5条(広告の事前許可) デベロッパーは、局の書面による許可を得なければ、ユニットまたは不動産のオフプラン販売を促進するために国内外のメディアで広告し、または国内外の展示会に参加してはならない。局長は、メディア広告および展示会参加の規制に必要な決定を発する。

第2章 エスクロー口座の開設

第6条(開設申請) オフプランでユニットを販売しようとするデベロッパーは、局にエスクロー口座の開設申請を提出しなければならない。申請には次を含む:①ドバイ商工会議所の会員証明 ②営業免許 ③開発対象地の権原証書 ④マスターデベロッパーとサブデベロッパー間の契約の写し ⑤所管当局およびマスターデベロッパーが承認した初期建築設計・エンジニアリング図面 ⑥認定監査人が証明したプロジェクトの見積費用・収益の財務書類 ⑦オフプラン販売についてマスターデベロッパーの承認を得た時点で建設工事を開始する旨のサブデベロッパーの誓約(サブデベロッパーがいない場合はマスターデベロッパーの誓約) ⑧デベロッパーと買主間の標準売買契約書

第7条(口座開設の方式) エスクロー口座は、デベロッパーとエスクロー・エージェント間の書面による契約に基づき開設され、オフプラン買主または融資者の支払金は、エスクロー・エージェントに不動産開発プロジェクト名義で開設された口座に預け入れられる。同契約は口座管理の条件および当事者の権利義務を定め、その写しは局に提出される。

第8条(登記簿への注記) 局は、マスターデベロッパー所有地の登記簿記載を更新し、当該土地またはその一部についてマスターデベロッパーとサブデベロッパー間で購入契約が締結された旨を表示することができる。オフプランのユニット買主は、プロジェクトが建設される土地の登記簿記載に、買主とサブデベロッパー間の購入契約締結の旨を表示するよう局に請求することができる。

第3章 エスクロー口座の管理

第9条(口座の専用性・差押禁止)

  1. エスクロー口座はプロジェクト名義で開設され、当該不動産開発プロジェクトの建設に専ら充てられる。デベロッパーの債権者のために、この口座の預入金に差押えを課すことはできない。
  2. デベロッパーが複数のプロジェクトを実施する場合、プロジェクトごとに別個のエスクロー口座を持たなければならない。

第10条(エスクロー・エージェント登録簿)

  1. 局は「エスクロー・エージェント登録簿」を備え、エスクロー・エージェントの名称を記載する。
  2. エスクロー・エージェントはエスクロー口座の管理に適格でなければならない。

第11条(報告・監督)

  1. エスクロー・エージェントは、局にエスクロー口座の収支の定期報告を提出しなければならない。局はいつでも情報・データの提出を求めることができ、その監査のため適切と認める者の支援を求めることができる。
  2. エスクロー・エージェントが本法またはその実施細則に違反したことが局に立証された場合、局は書面で通知し、是正の期限を定めなければならない。

第12条(記録へのアクセス) 預入者またはその代理人は、自己の会計記録にアクセスし、写しを請求することができる。公的機関の代表者も同様にアクセス・写し取得ができる。

第13条(融資金の預入義務) デベロッパーが融資を得るためにプロジェクトを担保に供する場合、融資機関・会社は融資額を当該エスクロー口座に預け入れ、本法の規定に従って管理させなければならない。

第14条(5%留保) エスクロー・エージェントは、デベロッパーが完成証明書を取得した後も、各エスクロー口座の総額の5%を留保しなければならない。留保額は、ユニットが買主名義で登記されてから1年後にデベロッパーへ解放される。

第15条(未完成時の預入者保護) 不動産開発プロジェクトが完成しない緊急事態が生じた場合、当該プロジェクトのエスクロー・エージェントは、局と協議のうえ、預入者の権利を保全するため必要な措置を取り、プロジェクトの完成を確保し、または預入者へ支払金を返金しなければならない。

第4章 罰則

第16条(刑事罰) 他の法令に定める罰則を妨げることなく、次の者には拘禁刑およびAED 100,000(約440万円)以上の罰金、またはそのいずれかが科される:①無免許で首長国において不動産開発業を営んだ者 ②免許取得のため所管当局に不正確な書類・情報を提供した者 ③詐欺的な不動産開発プロジェクトのユニットを、詐欺的であると知りながら販売の申出をした者 ④不動産開発プロジェクトの実施目的で引き渡された金銭を横領し、正当な権原なく使用し、または散逸させた者 ⑤監査人として、デベロッパーの財務状態の監査で故意に虚偽の報告書を作成し、または重要事実の開示を故意に怠った者 ⑥コンサルタントとして、不動産開発プロジェクトに関する虚偽の報告書を、虚偽であると知りながら証明した者 ⑦デベロッパーとして、2006年規則第85号に基づく不動産ブローカー登録簿に登録のないブローカーと取引した者。

※AED 100,000(約440万円)は下限。第16条自体に罰金上限の明記はない。ただし、「上限明記なし」は本条の文言についての説明であり、他の適用法令の効果まで否定するものではない。

第17条(登録抹消) デベロッパーは次の場合に登録簿から抹消される:①破産宣告 ②オフプラン販売許可から6か月が経過しても正当な理由なく建設工事を開始しない場合 ③免許の取消し ④第16条第2号、第3号、第4号または第5号の違反 ⑤首長国の不動産開発業を規律する法令への違反。

第5章 最終規定

第18条(経過措置) 本法施行日に事業を営むデベロッパーは、官報掲載日から6か月以内に本法を遵守しなければならない。局はこの期間を適切と認める範囲で延長できる。

第19条(手数料) 局は本法に基づき提供するサービスについて手数料を課すことができる。

第20条(抵触規定) 他の法令・細則の規定は、本法の規定と抵触する限度で廃止される。

第21条(実施決定) 議長は本法の実施に必要な決定を発する。

第22条(施行) 本法は官報に掲載され、掲載日に施行される。

発布:2007年5月6日(ヒジュラ暦1428年ラビー・アッサーニー月19日)ドバイにて
官報掲載・施行:2007年6月28日(ドバイ政府官報第323号)

実務への影響

本法によるエスクローは、オフプラン代金をプロジェクトごとに分別し、目的外利用とデベロッパー債権者による差押えを防ぐ仕組みです。政府または銀行による元本保証・預金保険ではなく、プロジェクト取消し時の全額回収を無条件に保証するものではありません。

買主は少なくとも次を確認します。

  1. デベロッパーがDLD/RERAの登録・免許を有すること。
  2. プロジェクト自体がDLDに登録され、現在の状態を確認できること。
  3. RERA承認済みのプロジェクト名義エスクロー口座があり、代金の支払先がその口座であること。
  4. 広告・マーケティングにRERAの正式許可があり、広告上のQRコードから許可を確認できること。
  5. 仲介会社および担当ブローカーが免許・登録を有すること。
  6. SPA締結後、売買がOqood経由で暫定不動産登記簿に登録されること。DLDの現行サービス条件では契約締結から90日以内。

オフプラン売買の暫定登記とその効力は、Law 13/2008第3条およびDLDの初回売買登録サービスも参照します。

エスクロー口座からの払出しは、Law 8/2007だけで完結しません。DLD FAQによれば、デベロッパーとエスクロー・エージェントの契約に主要工事段階を定め、段階完了時に技術確認を行ってから、請負業者、コンサルタント、マーケティング等の承認対象費用を支払う運用です。マーケティング費は総売上の5%までと説明されています。ECR 25/2009は、進捗段階自体を創設する法令ではなく、無承認の入出金や払出条件違反等に行政罰を課す執行規定です。

プロジェクトが正式に取り消された場合の監査、返金要求、口座不足時のデベロッパーの不足額返還、司法手続は、ECR 6/2010第25条から第27条およびDecree 33/2020を併読します。

関連ページ

改廃関係

本レコードを直接改正・廃止する法令は登録されていません(制定後の改廃は確認され次第、本欄に反映します)。

関連法令(改廃関係以外で本法の運用に関係する法令)

公式リンク

免責

本ページの日本語訳は参考訳です。UAE法令の正文はアラビア語であり、英語版も公式・非公式の翻訳です。解釈に相違がある場合はアラビア語正文が優先します。また、UAEは連邦法と各首長国法の二層構造を持ち、ドバイとアブダビでは適用される法令や制度が異なる場合があります。個別の取引・法人設立・居住・相続にどの法令がどう適用されるかは、状況により判断が分かれる専門的な論点です。本ページは一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。具体的な適用関係は必ず専門家にご相談ください。円換算はすべて参考表示です(1 AED = 44円、2026-07-16換算。法的な基準額はAED表記が正です)。(参照した英語版:Dubai Legislation Portal(dlp.dubai.gov.ae・最高立法委員会)/取得日:2026-07-16/改正確認日:2026-07-16)

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改訂履歴

2026-07-16初版公開(全22条の参考訳)

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