史上最高の前年に次ぐ、史上2番目の規模
6/17の恒久停戦を受けて反発
前年からやや低下も、なお高水準
回復を牽引したのは新築予約
DLD登記完了ベース・1AED=44円・2026年7月時点換算
2026年上半期の売買総額は12.6兆円・85,998件と、史上最高だった前年に次ぐ規模を維持しました。取引件数は5月に底を打ち、6月17日の恒久停戦を経て6月は前月比+31%回復。住宅の平均グロス利回りは6.58%とやや低下しつつ高水準を保ち、取引の約75%は引き続きオフプラン(新築予約)が占めました。当社でも直近12ヶ月(ドバイ・アブダビ合計)で約70件・約80億円(DLD登記完了ベース/1AED=44円・2026年7月時点換算)の仲介実績があり、日本人投資家の投資熱は冷めていません。
CHAPTER 01月次データで見る上半期
DLD公式ポータルの売買(Sale)データを月次で並べると、上半期の物語がそのまま浮かび上がります。1月は取引額3.18兆円と史上最高圏でスタート。2月末の開戦を挟んで3月に1.89兆円まで急減した後、4月の停戦成立で反発。5月に上半期の底をつけ、恒久停戦の6月に件数が急回復しました。
| 月 | 件数 | 取引額 | 額 前月比 | 局面 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 17,381 | 3.18兆円 | — | 史上最高圏 |
| 2月 | 17,001 | 2.67兆円 | ▲15.9% | 月末に開戦 |
| 3月 | 13,258 | 1.89兆円 | ▲29.4% | 戦時下・ラマダン |
| 4月 | 14,065 | 2.13兆円 | +12.9% | 4/7 停戦成立 |
| 5月 | 10,481 | 1.30兆円 | ▲39.1% | 様子見の底※ |
| 6月 | 13,760 | 1.44兆円 | +10.9% | 6/17 恒久停戦 |
| 上半期計 | 85,998 | 12.60兆円 | AED 286.4B |
注目すべきは、底が開戦直後の3月ではなく5月に来たことです。有事の売買は「パニック売り」ではなく「様子見による取引停止」として現れます。開戦前に商談が進んでいた案件は3〜4月に決済され、新規の意思決定が止まった影響が2ヶ月遅れて5月の数字に出ました。そして6月は件数+31.3%。待機資金が動き始めた初動が、既に数字に表れています。
前年比で見ると:史上2番目、しかし記録更新はならず
上半期の売買額12.60兆円(AED 286.44B)は、ドバイ史上2番目の水準です。前年(2025年上半期)が史上最高のAED 326.6Bだったため、前年同期比では▲12.3%。5年前(2021年上半期 AED 61B)と比べれば、市場規模は約4.7倍になっています。
| 上半期の売買額 | AED | 円換算 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 61.0B | 2.68兆円 | — |
| 2022年 | 114.5B | 5.04兆円 | +87.7% |
| 2023年 | 179.5B | 7.90兆円 | +56.8% |
| 2024年 | 233.0B | 10.25兆円 | +29.8% |
| 2025年(史上最高) | 326.6B | 14.37兆円 | +40.2% |
| 2026年(史上2番目) | 286.4B | 12.60兆円 | ▲12.3% |
出典:Dubai Land Department 公式ポータル(当社集計、2026年7月9日取得)。年次推移は W Capital によるDLDデータ集計(Arabian Business、2026年7月3日)。円換算1AED=44円。
CHAPTER 02特集:イラン戦争はドバイ不動産に何をしたか
検証①:取引は「止まった」が「逃げなかった」
戦時下の3月でも、ドバイでは13,258件・1.89兆円の売買が成立しています。さらにドバイ政府メディアオフィスの公式発表によれば、開戦を含む第1四半期の不動産取引全体(売買・ローン・贈与を含む)は約11.1兆円(AED 252B)・60,303件で前年同期比+31%、新規投資家も+14%。「戦争が始まったのに、四半期では過去最高」という逆説が、この市場の需要の厚みを示しました。投げ売りによる価格崩壊は、データ上どこにも観測されていません。
検証②:価格指数は本レポートでは扱わない
取引件数・取引額と価格は別の指標です。件数や金額が動いたことから価格の動きを読み取ることはできません。本レポートで扱うのは、DLD公式ポータルで確認できる取引件数・取引額と、ドバイ政府メディアオフィスの公式発表に基づく四半期値に限ります。
検証③:回復の初動は「新築予約」から
6月の住宅売買に占めるオフプラン(Oqood・完成前物件の予約登録)の比率は件数ベースで74.9%(5月75.5%)。年初来累計の69.2%を上回るペースで、回復局面を牽引しているのは完成物件ではなく新築予約です。なお、月次のデベロッパー別シェアで大手Emaar・DAMACが後退しAzizi・Binghattiが上位に入れ替わったのは、需要が中価格帯へ移ったからではありません。大手が2026年2月から6月にかけて新規プロジェクトのローンチをほぼ延期していたためです(当社の現地取材による)。7月に入り、政府系のEmaar・Nakheelを中心に販売が一斉再開され、久々の人気プロジェクトには購入希望者が殺到しています。
7月7日、イランがホルムズ海峡で商船3隻を攻撃し、米軍は8日・9日に報復攻撃を実施。イランはバーレーン・クウェート・カタール・ヨルダンの米軍関連施設への攻撃で応じ、そして7月12日、UAE領内への攻撃の再開も報じられました。UAEを含む湾岸諸国への散発的な攻撃は、今後も続くことが想定されます。それでも当社は、ドバイ・アブダビの不動産市場は回復基調を維持すると判断します。
根拠は3つ——①実証の質:上半期のUAEは傍観者ではなく、弾道ミサイル537発・ドローン2,256機を迎撃した主要標的でした(4月9日時点・UAE国防省)。空港の一時停止すら経験しています。それでも取引・登記・引き渡しは一日も止まりませんでした。散発的な攻撃が売買市場の取引を止めないことは、いま想定しうるよりはるかに苛烈な条件で、すでに実証済みです。②外交チャネルの稼働:カタール首相とイラン外相が9日に電話会談。米中央軍は「今回の攻撃は終了」と区切りを宣言し、米大統領はイラン側が新たな合意を求めて接触してきたと明かしています。③影響経路は特定済み:戦争が実害を与えたのは売買価格ではなく、観光とそれを需要源とする短期賃貸市場です(DXB旅客数は第1四半期に前年比約2割減)。当社の見立ては「短期賃貸の低迷は2026年内継続、2027年に回復」——詳細は関連分析「戦時下のドバイ観光と短期賃貸市場」で公開しています。
売買市場についての判断は明確です——攻撃対象が広がったとしても、それは市場が上半期に経験し、消化した事態です。そのとき市場が払った代償として確認できるのは、数ヶ月の取引停滞です。
いま起きている変化:「価格」ではなく「条件」で交渉する局面
新築(オフプラン)の提示価格そのものは下がっていません。デベロッパーは表示価格の値引きを避ける一方で、販売条件で実質的な譲歩を出すようになりました。上半期の様子見で滞留した在庫を捌く必要があるためです。
| 引き出せている条件 | 内容 |
|---|---|
| 支払いプランの後ろ倒し | 建設中の支払い比率を下げ、引渡し後の分割(ポストハンドオーバー)を厚くする |
| 登記費用の負担 | DLD登録料(物件価格の4%)の一部または全部をデベロッパーが負担 |
| 利回り保証・家賃保証 | 一定期間の賃料または利回りをデベロッパーが保証する条項の付与 |
| バルクディスカウント | 複数戸をまとめて取得する際の割引率が、平時より有利に設定される |
出典:当社が2026年上半期〜7月上旬に実施した交渉・成約の実務経験に基づく観察。市場統計ではなく、案件・デベロッパーにより条件は大きく異なります。
CHAPTER 03勝者と敗者 — エリア別の二極化
市場を平均で語ると、内訳を見落とします。同じ市場で+37%と▲10%が同居しています。
① 再生産できない供給(Palm Jumeirah Frondsは平均約398万円/㎡)
② 物語のある再開発(Al Jaddaf、Meydan)
③ 戸建プレミアム(移住需要の主役はファミリー)
① 新規供給の集中(Dubai Harbour、Bluewaters)
② 価格の先行し過ぎ(ブランドは下落を防がない)
③ 郊外量産型の息切れ
「どのエリアか」より「そのエリアに今後どれだけ供給が来るか」。上昇組は例外なく供給制約を持ち、下落組は例外なく供給増に直面しています。物件選定の第一の質問は、立地ブランドではなく需給です。
CHAPTER 04賃貸市場と利回り — 静かな転換点
6月のドバイ住宅の平均グロス利回りは6.58%。東京都心の実質2〜4%台と比べれば依然高水準ですが、変化の兆しも出ています。主要エリアの賃料は6月に前月比マイナスが目立ち(Downtown ▲3.2%、Dubai Hills ▲3.1%、Palm Jumeirah ▲2.3%)、数年続いた「貸し手市場」から、テナントに選択肢が戻る局面への移行が始まりました。
| 高利回りエリア(6月・アパート) | 平均グロス利回り | 平均年間賃料 |
|---|---|---|
| Dubai Investments Park | 9.34% | 約551万円 |
| International City | 8.79% | 約164万円 |
| DAMAC Hills 2 | 8.71% | 約801万円 |
| Al Khail Heights | 8.49% | 約356万円 |
| Dubai Sports City | 8.13% | 約305万円 |
出典:Property Monitor Dubai Rental Yields / Rentals Index(2026年7月9日取得)。グロス利回りは経費控除前。1AED=44円換算。
CHAPTER 05日本人投資家の実像 — 当社成約 約70件・約80億円
市場データだけでは見えない「日本人投資家のリアル」を、当社の確定取引データから公開します。海外の市場レポートには決して載らない、日本人だけの購入像です。
中央値 約8,800万円
平均7,717万円・75㎡
値上がり益狙いが中心
上記の平均購入像は、直近12ヶ月(ドバイ・アブダビ合計)の成約のうち詳細データを集計できた案件に基づく速報集計(2026年6月末時点)です。
エリア別ではDubai South/EMAAR South(新空港エリア)が30%と最多。購入目的は純投資が70%。注目すべきは、開戦を挟んだ期間の集計でもリピート率が42%(2025年5月〜2026年4月・当社調べ)に達したことです。有事の報道が続くなかでも、一度ドバイの取引プロセス(エスクロー保全・登記の透明性)を経験した投資家は、2件目以降を淡々と積み増しました。市場データが示した「逃げない資金」の姿は、当社の顧客データでも同じでした。
CHAPTER 062026年下半期の見通し
| シナリオ | 前提 | 下半期の見通し |
|---|---|---|
| ベース 蓋然性:高 | 停戦が維持され、海峡を巡る応酬も局地的に留まる | 取引件数は6月の反発が持続。価格指数は高値圏でのもみ合い(±3%程度)。エリア二極化が進行し、賃料は緩やかな軟化継続。 |
| 強気 | 核協議が最終合意に到達 | 凍結された意思決定が一気に解凍。月次取引額が1月水準(3兆円台)へ回帰し、価格指数は史上最高値を更新。 |
| 弱気 | 停戦が再度崩れ、湾岸への影響が再燃 | 上半期パターンの再現:取引が2〜3ヶ月停滞する公算。価格については本レポートでは見通しを示しません。 |
シナリオ横断の注視点は3つです。①供給ペース:オフプラン比率75%は2027〜28年の引き渡しラッシュを意味します。②賃料の軟化:利回りの分子が細れば、価格の高値追いは正当化しにくくなります。③円との関係:1AED=44円は過去1年で約13%の円安が進んだ水準です。円建て評価額は為替だけで大きく動くため、「ドバイの相場観」と「円の相場観」は分けて持つ必要があります。
FAQよくある質問
2026年上半期のドバイ不動産の取引額はいくらですか?
ドバイ土地局(DLD)の公式データによれば、2026年上半期の売買取引は85,998件・AED 286.43B(約12.6兆円、1AED=44円換算)でした。これはドバイ史上2番目の上半期実績で、史上最高だった2025年上半期(AED 326.6B)比では▲12.3%です。
イラン戦争でドバイの不動産価格は下がりましたか?
開戦から恒久停戦までの131日間、ドバイ市内で不動産取引・登記・引き渡しが止まった日は一日もありませんでした。
ドバイ不動産の取引はいつ底を打ちましたか?
取引の底は開戦直後の2026年3月ではなく、2ヶ月遅れの5月でした(10,481件・1.30兆円)。開戦前に商談が進んでいた案件は3〜4月に決済され、新規の意思決定が止まった影響が遅れて統計に表れたためです。6月17日の恒久停戦署名を経て、6月の取引件数は前月比+31.3%と反発しています(5月はイード休暇で稼働日数が少なく、反発率にはその反動も含まれます)。
2026年のドバイ不動産の利回りはどのくらいですか?
2026年6月時点の住宅の平均グロス利回りは6.58%です(経費控除前)。高利回りエリアはDubai Investments Park 9.34%、International City 8.79%、DAMAC Hills 2 8.71%など、庶民価格帯に集中しています。一方、主要エリアの賃料は6月に前月比マイナスが目立ち、利回りは緩やかな低下局面に入っています。
いまドバイの新築物件は値引きされていますか?
新築(オフプラン)の提示価格そのものは下がっていません。デベロッパーは表示価格の値引きを避ける代わりに、支払いプランの後ろ倒し(引渡し後分割の拡大)、DLD登記費用4%の一部または全部負担、一定期間の利回り・家賃保証、バルク購入時の割引率改善といった条件面での譲歩に応じやすくなっています。ただし保証利回りは販売価格に上乗せされている場合があり、契約書で期間・支払主体・解除条件の確認が必要です。
ドバイで値上がりしているエリアと下落しているエリアはどこですか?
直近12ヶ月ではPalm Jumeirah Fronds(戸建)が+37.1%、Al Jaddaf(アパート)が+35.5%と上昇した一方、Dubai Festival Cityは▲10.2%、Madinat Jumeirah Livingは▲9.4%と下落しました。上昇組は例外なく供給制約を持ち、下落組は例外なく新規供給の増加に直面しています。
関連:アブダビ不動産 2026年上半期レポート/2026年6月の月次マーケットレポート/2026年5月の月次マーケットレポート/2027年の供給パイプライン分析/新築の値引き交渉/ドバイ不動産の完全ガイド(価格・利回り・買い方)
データ出典:Dubai Land Department(DLD)公式ポータル Real Estate Transactions(2026年7月9日取得)/Dubai Media Office Q1公式発表/Property Monitor(Sales Index、Rentals Index、Rental Yields、PMDPI、月次Market Statistics)/JETROビジネス短信・Bloomberg・日本経済新聞・首相官邸発表/Eminence Luxe自社確定取引データ(速報集計)。
注記:円換算は1AED=44円(2026年7月12日時点の実勢を丸め)で統一。DLD月次値は売買(Sale)タブ・全物件種別であり、ローン・贈与を含む取引全体とは定義が異なります。2025年上半期との比較値(AED 326.6B)も同じSale基準の集計値で、ドバイ政府発表の「total transactions」(AED 431B・ローン等を含む)とは別指標です。2026年5月は5月25〜29日のイード・アル=アドハー休暇により稼働日数が少なく、月次比較の際は留意が必要です。各価格指数は算出方法が異なるため水準の直接比較はできません。チャートの一部は原典の主要数値点に基づく概形トレースです。
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