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MARKET INSIGHT — SUPPLY PIPELINE

ドバイ不動産は2027年に供給過剰になるか
— 完成率56%という実態

2026年7月9日公開/監修:森 和孝(国際弁護士・税理士/DLD・ADREC公認ブローカー)
結論

ドバイの「供給過剰」は、発表された計画戸数ではなく、実際の引渡戸数で見るべきです。2022〜24年の完成率は56%、2026年の見込みは48%にとどまります。ただし2027年には5年平均の約2倍にあたる70,537戸の引き渡しが計画されており、JVC・Business Bay等の供給集中エリアでは局所的な調整が起こり得ます。市場全体の崩壊ではなく、エリア選別の問題です。

「計画12万戸」は、そのまま供給されない

2026年のドバイ不動産を語るとき、必ず登場するのが「供給過剰」という言葉です。Fitch Ratingsは2025年5月のレポートで、2026年に約120,000戸の引き渡しが計画されている(2024年の実績は約30,000戸、2025年見込みは約90,000戸)と指摘し、最大15%の価格調整を予測しました。同社によれば、進行中プロジェクトの約75%は完成度20%未満です。

しかし、この数字を「実際に市場へ出てくる戸数」と読むのは誤りです。ドバイでは、計画戸数と実際の引渡戸数が構造的に大きく乖離します。

過去の完成率は56%だった

期間計画戸数実際の引渡(見込)完成率
2022〜2024年(実績)174,00097,00056%
2025年(見込)37,17122,89662%
2026年(見込)71,61334,74048%
2025〜26年 合計108,78457,63653%

出典:2022〜24年の実績はFitch Ratings。2025・2026年の見込みはMorgan's International Realty「Dubai Residential Supply and Delivery Outlook 2025–2027」(2025年6月公表、Khaleej Times等が報道)。いずれも2025年時点の予測を含みます。2026年の実際の完成戸数は本稿執筆時点(2026年7月)で確定していません。

つまり、計画戸数をそのまま供給量として読むと、実態の約2倍に見積もることになります。この乖離の主因は、施工業者(コントラクター)の不足、資金調達の遅延、購入者の支払いスケジュール、販売の進捗です。過去4年間に大量のプロジェクトが立ち上がった結果、有資格の施工業者が慢性的に不足しているとされています。

数字の出どころには注意が必要です。Fitchは2026年の計画を約120,000戸、Morgan'sは71,613戸としており、2倍近い開きがあります。これは対象範囲(住宅のみか複合開発を含むか)や集計時点が異なるためです。「ドバイの2026年供給は◯万戸」という単独の数字が出てきたら、まず出典と定義を確認してください

2027年が本当の試金石になる

引き渡しが遅れているということは、その分が将来に積み上がるということです。Morgan's International Realtyの予測では、2027年の引渡計画は70,537戸。過去5年平均の35,531戸に対して約98%増、10年以上で最大の単年供給となります。

供給が集中するエリア

エリア2025〜27年の引渡計画備考
Jumeirah Village Circle(JVC)16,852 戸3年連続で最も活発な開発区域
Business Bay10,127 戸都心部・投資用アパート中心
Azizi Venice7,860 戸Dubai South近郊の大型開発

出典:Morgan's International Realty(2025年6月公表)。同社Managing Director の Elias Hannoush 氏は、JVCへの供給集中が一時的な供給過剰と価格下押しを招く可能性に言及しています。

Fitchの「▲15%」は、上半期時点では起きていない

ここで、当社が実際に集計した一次データと突き合わせます。

Fitch Ratingsは2025年後半から2026年にかけて最大15%の価格調整を予測しました。しかし2026年上半期を終えた時点で、Property Monitor の Dubai City Index(42主要コミュニティの中央値ベース)は、3月の年間高値1,683 AED/sqftから6月1,639 AED/sqftへ、ピーク比▲2.6%の調整に留まっています(当社集計、2026年7月9日取得)。イラン戦争という地政学ショックを挟んでなお、この水準です。

ただし、これはFitchが間違っていたという意味ではありません。Fitchの予測対象・期間・指数の定義と、当社が参照するCity Indexは異なります。単純比較はできません。確実に言えるのは、「2026年上半期時点で、15%規模の価格下落は観測されていない」という事実だけです。供給圧力が価格に反映されるのは、引き渡しが実際に起きた後です。

投資家が今すべきこと

当社が2026年6月のDLDデータを集計したところ、住宅売買に占めるオフプラン(完成前物件)の比率は件数ベースで74.9%でした。今日買われている物件の4分の3は、2027年以降に引き渡される物件です。この積み上がりが、上の表の「将来の供給」を形づくっています。

1. 「エリア」ではなく「そのエリアの供給パイプライン」を見る

当社の半期レポートで検証したとおり、直近12ヶ月で価格が上昇したエリアは例外なく供給制約を持ち、下落したエリアは例外なく供給増に直面していました。ブランドや立地の評判は、供給圧力を打ち消しません。

2. 引渡時期を契約書で確認する

完成率48%という数字は、裏を返せば「予定どおりに引き渡される保証はない」ということです。売買契約書(SPA)の引渡予定日、遅延時の違約金条項、エスクロー口座の状況を確認してください。当社では弁護士がこれらの条項を精査した上でご提案しています。

3. 価格ではなく「条件」で交渉する

2026年上半期を経て、デベロッパーは提示価格を下げない一方、支払いプランの後ろ倒し、DLD登記費用(4%)の負担、利回り保証、バルク割引といった条件面での譲歩に応じやすくなっています。詳細は半期レポート第2章をご覧ください。

PILLAR REPORT
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よくある質問

ドバイ不動産は2027年に供給過剰になりますか?
市場全体が供給過剰になるとは限りませんが、特定エリアでは局所的な供給過剰が起こり得ます。2027年には70,537戸の引き渡しが計画されており、過去5年平均の35,531戸に対して約98%増です。ただし過去の完成率は低く、2022〜24年は174,000戸の計画に対し実際の引き渡しは97,000戸(56%)にとどまりました。
ドバイの計画戸数と実際の引渡戸数はどれくらい違いますか?
2022〜2024年の完成率は56%。予測では2025年が62%、2026年が48%で、2年合計では53%です。計画戸数をそのまま供給量と読むと、実態の約2倍に見積もることになります。
なぜドバイでは引き渡しが遅れるのですか?
主因は施工業者の不足、資金調達の遅延、購入者の支払いスケジュール、販売の進捗です。過去4年間に大量のプロジェクトが立ち上がった一方、有資格の施工業者が不足しているとされています。
Fitchが予測した15%の価格下落は起きましたか?
2026年上半期時点では起きていません。Dubai City Index はピーク比▲2.6%の調整に留まっています(当社集計)。ただしFitchの予測対象・期間と当社が参照する指数は定義が異なるため、単純比較はできません。
供給が集中するエリアはどこですか?
2025〜2027年の3年間で最も引き渡しが集中するのはJVCの16,852戸、次いでBusiness Bay 10,127戸、Azizi Venice 7,860戸です。これらのエリアは供給吸収に時間がかかり、価格・賃料に下押し圧力がかかる可能性があります。

出典:Fitch Ratings(2025年5月、Dubai residential price correction outlook)/Morgan's International Realty「Dubai Residential Supply and Delivery Outlook 2025–2027」(2025年6月公表、Khaleej Times 2025年6月9日ほか報道)/Property Monitor Dubai City Index(2026年7月9日、当社取得)/Dubai Land Department 公式ポータル(2026年7月9日、当社集計)。

注記:本稿で引用する供給予測は、いずれも2025年時点で公表されたものです。2026年の実際の完成戸数は本稿執筆時点で確定しておらず、確定値が判明し次第、本稿を更新します。計画戸数はFitchとMorgan'sで対象範囲・集計時点が異なり、単純比較はできません。円換算は1AED=44円(2026年7月9日時点)。

免責:本稿は情報提供を目的とし、特定物件の勧誘や投資成果の保証を行うものではありません。将来見通しは公開情報と当社分析に基づく見解であり、実際の結果と異なる可能性があります。投資判断はご自身の責任にて、最新の一次情報をご確認のうえ行ってください。

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