観光への打撃は「実測できる」— DXB旅客▲2割、稼働率48%
売買市場の傷がピーク比▲2.6%にとどまった一方(半期レポート第3章)、観光の数字は明確に落ちました。ドバイ国際空港(DXB)の第1四半期の旅客数は1,860万人と、前年同期の2,340万人から約2割減。開戦翌月の3月は例年比66%減まで落ち込み、IATAの集計では中東キャリアの国際旅客輸送量(RPK)は3月に61%減少しました。国連観光機関のバロメーターによれば、中東のホテル稼働率は1月の75%から3月には48%へ低下。ドバイでは100件超の国際会議・展示会が中止・延期され(Northbourne Advisory調べ)、英国は一時UAEへの不要不急の渡航中止を勧告しました。
空域の全面再開は5月2日——開戦から約2ヶ月を要しました。Burj Al Arabが18ヶ月の改修休業に入るなど、ホテル側の供給にも爪痕が残っています。
短期賃貸への波及 — 需要源が細れば、稼働も細る
ホリデーホーム(短期賃貸)の需要源は観光客です。旅客数が2割減り、ホテル稼働率が半減する環境では、短期賃貸の稼働・単価も同方向に沈みます。実際、半期レポートで示したとおり、賃料指数は6月に軟化へ転じました(ダウンタウンは前月比▲3.2%)。ホテルが値下げとステイケーション誘致で稼働を守りに来ているため、短期賃貸は「安くなったホテル」との競合にもさらされています。
一方で、底堅い側面もあります。サービスアパートメントや短期賃貸には、駐在員の一時滞在や長期滞在型の予約が下支えとして入っており、ホテルより落ち幅が浅い区画も観測されています。影響が大きいのは観光客依存の観光地区(Palm Jumeirah・Marina・Downtown)の短期賃貸で、実需居住区の長期賃貸への影響は限定的——これが当社の現地観測です。
回復はいつか — 外部予測は「2027年に2025年超え」で一致
当社の見立ては「2026年内は低迷が続き、本格回復は2027年」です。これは希望的観測ではなく、複数の外部データと一致しています。
調査会社GlobalDataは、UAEへの国際到着数を2025年の約3,000万人→2026年は約2,640万人(約12%減)→2027年は3,210万人と、一年で2025年を7%上回る水準へ反発すると予測しています。ホテル大手Accorの地域CEOは「すでに回復段階にあり、夏から来年にかけて戦前水準に戻る」と述べ、業界の共通見解は「回復は域内・短距離から始まり、長距離・法人需要の完全回復は2026年末から2027年」。米・イランの和平合意後、英国の渡航警告は解除され、Emiratesは5月中旬から主要路線を約10%増便、英・インド路線の座席供給は3割増えています。2027年にはRas Al KhaimahのWynn Al Marjan(39億ドル)が開業し、新たな来訪動機も加わります。
7月の応酬再燃は、この回復の時計を数週間〜数ヶ月遅らせる可能性があります。ただし方向は変えない、というのが当社の判断です。理由は半期レポート第3章で述べたとおり——散発的な攻撃が経済活動を止めないことは、はるかに苛烈な条件下で実証済みだからです。
投資家への含意 — 3つの実務判断
① 短期賃貸の収支計画は「2026年は保守的に」。ホリデーホーム運用の利回り試算は、2026年下半期について稼働率・単価とも平時を下回る前提に切り替えることをおすすめします。② 長期賃貸へ軸足を移す選択肢。実需の厚い価格帯(年間賃料352万円以下が契約の63.6%)の長期賃貸は、観光変動の影響が相対的に小さい領域です。③ 仕込みの時間軸は2027年。回復予測が正しければ、観光地区の短期賃貸物件は「稼働が沈んでいる2026年に条件交渉で仕込み、2027年の需要回復で刈り取る」時間軸が描けます。ただしこれは回復シナリオを前提とした戦略であり、情勢次第で時計は後ろにずれます。
よくある質問
- 戦争でドバイの観光客はどれくらい減りましたか?
- ドバイ国際空港の第1四半期の旅客数は1,860万人で前年同期比約2割減、3月単月では例年比66%減でした。中東のホテル稼働率は1月の75%から3月に48%へ低下しています(IATA・UN Tourism等の公開データ)。
- 短期賃貸(ホリデーホーム)の低迷はいつまで続きますか?
- 当社は2026年内は低迷が続き、本格回復は2027年とみています。GlobalDataはUAEの国際到着数が2027年に2025年を上回ると予測しており、ホテル業界首脳の見通しとも一致します。ただし情勢次第で時計は後ろにずれます。
- 売買市場への影響はないのですか?
- 上半期の実証では、売買市場の価格の傷はピーク比▲2.6%にとどまりました。戦争の実害は観光とそれを需要源とする短期賃貸に集中しています。詳細は半期レポート第3章をご覧ください。
出典:Fitch Ratings(2025年5月、Dubai residential price correction outlook)/Morgan's International Realty「Dubai Residential Supply and Delivery Outlook 2025–2027」(2025年6月公表、Khaleej Times 2025年6月9日ほか報道)/Property Monitor Dubai City Index(2026年7月9日、当社取得)/Dubai Land Department 公式ポータル(2026年7月9日、当社集計)。
注記:本稿で引用する供給予測は、いずれも2025年時点で公表されたものです。2026年の実際の完成戸数は本稿執筆時点で確定しておらず、確定値が判明し次第、本稿を更新します。計画戸数はFitchとMorgan'sで対象範囲・集計時点が異なり、単純比較はできません。円換算は1AED=44円(2026年7月9日時点)。
免責:本稿は情報提供を目的とし、特定物件の勧誘や投資成果の保証を行うものではありません。将来見通しは公開情報と当社分析に基づく見解であり、実際の結果と異なる可能性があります。投資判断はご自身の責任にて、最新の一次情報をご確認のうえ行ってください。